それにしても、何で世界的に人気なんだ?
俺は日本全国的な人気を狙ってたんだが、ネットってすごいな……。
外国の方も『T』様を見て、何才だろう?とか、性別は?とか考えてるんだろうか?不思議なもんだ。
この状態を知ってるやつは学校に俺の他に一人だけいる。
幼馴染の紺野未來(みらい)。幼馴染は騙せなかった。不覚……。
学校の帰り道。俺の家と未来の家は方向が同じようだ。
校内では陽キャの未來が話しかけてくる。
「お主(ぬし)も悪(わる)よのぅ」
どこの悪代官だよ?
「俺は俺が好きなようにやってるだけだ。それが世界的に人気になっただけだ」
「正直、あんたそこらの先生の年収よりも高収入でしょ?」
はい、そうです。スポンサーがいっぱいつきました。年齢・性別・本名とか全部不詳で構わないという奇特なスポンサーが多数ついてます。
「俺についてるスポンサーも勇気あるよなー。全部不詳な相手と商談してスポンサー契約するんだから」
「で、条件とかあるんでしょ?」
「今後、年齢・性別・本名等が容易に分かるような行動は慎む」
「それ、50歳の男性だったらどうするんでしょうね?」
「うーん、世界的だし、どっかの国のスパイとかやってそう。あとハッキングとかで場所の特定?」
「うわー、ストーカーみたいじゃん。こわー、いやー」
「実際は10代の男だからなぁ。10代の美少女を想ってスポンサー契約してたり、ハッキングしてたりするかもよ?」
ハッキングは嫌だなぁ。
場所の特定で、『T』様の住所が特定されてしまう。ファンが押し寄せるんだろうな。面倒な。
聖地巡礼とか。うちが(笑)。
ただの一軒家なんだけど。陰キャの男子高校生が暮らす一軒家。
場所が特定されたら芋づる式に次々と明らかになりそうで、『T』様の秘匿性が失われてしまう。
スポンサーの契約金の口座だって、仕方なく都心の銀行につくった。
振り込みは『T』宛で口座番号を入力するまた『T』宛となる。
スポンサーに「『T』の秘匿性のためです。口座の名義がわかると、年齢から全てわかりますよ?」と半脅した。
今日は髪をオールバックにされて危なかったなぁ。黒縁眼鏡って強力だなぁ。
うーん、オールバックの男バージョンにしようか?ちょっとした冒険♪
翌日
「見たー?『T』様のオールバック!なんか超セクシーじゃない?あれで水が滴ってたら最高だなぁ」
ほう、今後の参考にします。
「二日連続の男バージョン!『T』様、なんかあったのかな?こないだも女バージョンが二日連続だったし…。なんか心配」
心配は有難いケド、何もありません。
「女はみんな『T』様『T』様ってそんなにいいか?」
「なによ、僻んでるの?鏡見なさいよ!月とミジンコよ!」
すごいな。そこはスッポンじゃないんだな。顕微鏡じゃないと見えないじゃないか。
「そーよそーよ、男だって『T』様『T』様って女バージョンの『T』様に首ったけじゃない?」
「それを言われると……」
女は女バージョンの『T』様を見ても、僻んだりしないのか?未來曰く、女子は女バージョンの『T』様を見てどうしたら美人に見えるのかを研究しているとのこと。恐ろしや。視線が。
「そういえばさぁ、『T』様って何才なんだろうね?」
「俺はお姉さまだったらいいな」
「私はイケオジ。あ、でも女バージョンの『T』様が無理か。大学生くらいかな?」
「女声が出るから声変わり前の男の子とか?」
「かなりの低音も出てる。あれは声変わりしてないと無理がある」
「総合すると声変わりした男の子?」
「げっ、俺男見て超美人!とか言ってたのかよ」
「俺もそれ思った」
「女の子でも声低い子いるわよ。ハスキーボイスの子とか酒焼けした子とか?」
ナイス未來!
「酒焼けした子に高音は出せないだろう?」
「「「うーん」」」
ははは、悩め悩め。それこそが俺の思うつぼだ。
本日の帰り道また未來と一緒になった。
「全く、悪(わる)よのぅ。ああいう事態になるのが面白いんでしょ?サイテー」
「まぁ、そう言うな。秘匿性が『T』のウリだから。とりあえず、フォローサンキュー。あのままいくと『T』様は男性って断定しちまうからな」
「事実じゃない?」
「そうなんだけど。今日の更新は女バージョンで普段より女らしくやってみるか」
「言葉遣いとか?」
「うーん、それは難しそうだから、俺は歌唱力に頼ってるんだよな。うーん、高音が多い女声の歌。ジャンルを問わず」
「そうそう、『T』様が歌うとその曲が再ブレークするって噂!」
「マジか?責任重大だな。選曲もしっかり考えよう」
「今まであんまり考えてなかったの?」
「まぁ、なんとなく?歌えるし、まぁいいや的な」
頭を抱えなくてもいいじゃないですか、未來さん。
その後、アキラもカエデも通信制で高校に通い卒業。 カエデは地味に大ちゃんにアプローチを続けていたらしく、高校卒業資格を得てすぐに大ちゃんと結婚する運びとなった。大ちゃんはA&Kを続けてもいい。というか、二人のファンだから、カエデ結婚後も仕事を続ける。 アキラはなんというか、俺は無理だと思ったのに声楽で音大に入学しやがった。音大の声楽はオペラのイメージだけど大丈夫なんだろうか? なんでも歌えるから大丈夫だろうけど、A&Kってバレないかなぁ? と、心配していたらあっさりバレたらしい。声でわかるよな。声楽指導するくらいなら声聞けばわかるだろう。 そこで、出会った教授(若い!美人!巨乳!)と結婚すると言い出した。「言うのは簡単だけど、まず二人は交際をしてるのか?」「父さん?俺がおいそれと顔出しでデートとかできるわけないだろう?」 つまり交際もしていない状態?その状態で結婚宣言?「それは、「結婚をしたい人を見つけた。」というのではないのか?」「多分、向こうも俺のこと思ってくれてると思うけど……」 確信が持てないのによく言ったなぁ。「まずはプロポーズしてこい!」 そう送りだしたら、アキラのプロポーズにOKで我が家を訪れた。 おう、話には聞いていたけど、教授にしては若くて美しい。そして爆乳!あ、傍にユカリがいるんだった。「私は両親がもう亡くなってしまっています。コウジさんとユカリさんがお義父さんとお義母さんになるんですね。二人とも若くてきれいですね!」 そんな貴女も若くて美しい。そして爆乳。あ、この人の脚もキレイだなぁ。 そんなわけで、うちの美脚遺伝子は脈々と受け継がれていくようです。大ちゃんとカエデのペアによって美脚遺伝子は濃くなるし、ここで新たなる美脚遺伝子が組み込まれるようだし。 『T』から始まってる声の遺伝子も脈々と受け継がれていきそうです。
案の定マイケルに聞いたところ、海外でもちょっと有名らしい。「あー、PVで入れ替わったりしたからなぁ。俺が女装して歌ってみたり?」「そういうのやったね。で、それで海外でも有名になっちゃったりしてるの?」「そうらしい。東洋人で、そういった双子のデュオは知らないか?って升田の親父さんが聞いてくれた。今度お礼に行かなきゃな」 決して、寿司を食べたいわけじゃないぞ!あくまでもお礼だ!「これじゃあどこでも同じだね。もう、日本の中で恋人探しで良くない?」「サンセー!」 こいつら…結託しやがった。周りを巻き込んでおきながら結論をさっさと出しやがって。「具体的にどうやって彼氏・彼女を見つけるんだ?」「この際だから、今後の活動をPVとCDのみにする。メディアに顔を出すことはしない…とか?」「A&Kの人気に影響しないか?」「せっかくだから、公式ホームページのみに顔を出すってのはどうですか?プロデューサー?」 こいつらはトークもなかなかウリだったんだよな。実際トーク番組に顔を出したりしてたし。「そんでお前らは今後どうするんだよ?」「なんか資格を取りたいなぁ?」「私も!」 遺伝でこいつらもそこそこ賢いだろうけど、なんの資格・免許を取るんだよ?「死なないような資格とか免許にしてくれよ」「「イエス・ボス!」」 「私は大ちゃんの助けになるような資格がいいなぁ。‘管理栄養士’とか?」「お前、まさか大ちゃんが好きなのか?」 カエデがまさかの赤面を。まあ、イトコだし結婚可能だけど、大ちゃんなぁ…。「そこは頑張れ~というしかないが」「え~?父親ってそんな奴に大事な娘はやれん!とか言うんじゃないの」 責める?応援してるんだけど?「カエデは出会いが少ないだろ?大ちゃんは昔から知ってるいい子だし。‘そんな奴’には該当しないんだよね。カエデの出会いが少ないってのがなかなか問題だなぁ。だから、アキラの方が心配になる。アキラはどんな資格を取りたいんだ?」「実生活に役に立つ資格かなぁ?‘気象予報士’みたいな?」 超難関じゃないか?大丈夫か?「国家資格がいいよなぁ。A&Kだっていつまでもできるわけじゃないだろうし。‘救急救命士’とか?」「お前が死ぬぞ?それは却下。A&Kがいつまでもできるわけじゃないってのは真理だな。声にも限界があるからな」「教職員ってのは
「俺だってさぁ、年齢=彼女いない歴はヤダよ」「あ、そんなの私だって~」 と、二人は言うけど。アーティストとして忙しくしてて、顔バレしてるからなかなか出会いはないなぁ。「そうだなぁ?海外の人だったら二人の事知らないんじゃないか?日本語で歌ってばかりだし」「でも、ネットで俺達の画像あがってるらしいよ?」 それは著作権の問題だ。「それはソニアに言って、削除を頼もう。なんなら法的に慰謝料を…」「「そんな問題なんだ」」「そんな問題だ」 こいつらが本来稼ぐはずのものをネットで簡単にダウンロードなんかされては、収入減だ。迷惑千万!「あー、升田の親父さんの親戚が海外にいるから、連絡してみるか?」「「お願い!!」」 こいつら…鬼気迫ってるな…。 父さんとしてはこれ以上升田と親戚にはなりたくないだろうけど、こいつらの気持ちもわかるんだよなぁ。 三人で寿司をご馳走になりながら、話をした。「はぁ、マイケルかぁ。懐かしい名前だなぁ。よしきた!二人のお願いだもんな。おじさん聞いちゃう!」 おそらくだが…お爺さん世代だろう? カウンターには大成さんと……大ちゃんがいる。「「大ちゃん?見習い?」」「ああ、俺は俺で独立しないとな!」 何を言うか!店を継ぐんだよ! 変態一族は店を継ごう。大ちゃんは変態というよりは美しい脚を持って生まれてきたみたいだけど、変態の『美脚英才教育』(?)を受けているのかな? 美脚を売りにした寿司屋というのは斬新だな。客から見えねーじゃん。やはり、カウンター席をアクリルにするんだろうか?大成さんと親父さんが決めることだろう。俺に決定権があるわけじゃないし。 『T』から始まって、その孫はメジャーデビュー。だって、音域が広いんだもん!「これ聞いてるだけだと本当にどっちが歌ってるのかわかんないな」「「それがウリですから」」 孫に言われてしまった。より一層精進していきます。 二人はうまく恋人出来るのか?このネット世界で…。
紆余曲折を経て、ユカリは出産。 俺は、マンションを購入し、新生活に必要な家具・家電などを全部揃えた。 忘れちゃいけないのが、子供用のいろいろ。4LDKでよかったと思う。 ユカリが産んだのは男の子と女の子の双子。 男の子はアキラ。女の子はカエデ。 その後もなんだか色々あったけど(大学で色々言われる)、卒業しソニアに入社。 以前から構想があった『K』のカバーアルバムをメジャーデビューさせるということに挑戦した。当たった。爆発的ヒットを記録し、海外でも売れて、海賊版も出る始末。 そんなわけで俺は収入がめっちゃ増えた。うーん、これは安定しては得られないからなぁ。お金は大事にとっておこう。 代わりに、他のアーティストのプロデュースをするようになった。曲こそ作れないが、俺が作ったPVの評判はなかなかのもので、地味に高収入を維持している。こっちは安定しているのだろうか?貯金はもちろんするが、家計は結構潤っていると思う。 しかし、双子が相手の生活なので、いつ大きな出費が二倍で襲い掛かってくるかもしれないと、構えているのはユカリです。 俺は知らない人をプロデュースしながら、家計を支えています。 俺は意識していないけど、業界では俺は女性アーティストに露出をさせるというレッテルを貼られた。うーん、無意識だからなぁ。癖というんだろうか? 升田の親父さんのところで、愚痴っていたらねーちゃんに「あんたは他人に露出させてるの?自分が露出すればいいものを。全く呆れるわねぇ」と叱責された。リンカにも白い目で見られていたようで、心が痛い。 うちの双子達は順調に成長。 歌声は二人とも音域広いだろ?脚については升田の親父さんから「パーフェクト!」というお言葉をいただきました。俺とユカリの子だからなぁ。 二人は中学を卒業するや否やメジャーデビュー。 ユカリのご両親をハラハラさせているみたいだけど、二人とも楽しそうにやっています。 特に二人でデュエット曲を歌う時に、男性パートも女性パートも二人ともどっちを歌ってるんだかわからないところがファンの心を掴んでるらしい。二人とも全部一人で歌えるからなぁ…。アーティストネームはA&K。どっかで俺とかねーちゃんとか父さんの足がつきそうだけど、まぁ楽しそうだからいいかぁ。とほったらかしです。 父さんもねーちゃんもストップかけてな
「俺は俺の姉達と話したんだけど、2世帯住宅は反対された。その理由がな?今は良いけど、お義父さんもお義母さんも老化するだろう?そうして二人が介護施設に入ったらどうするの?って話だった」「そうね。お父さんが突っ走って、早くも工務店の人と相談し始めてるのよ!私はストップかけてくる。あと、私はもう一度2世帯住宅反対の話を聞きたいわ。コウジのお義姉さんの話よね?会ってみたいわ」 たいしたねーちゃんじゃねーけどな。 ユカリが2世帯住宅にストップをかけてくれたおかげで一時的に止まっている。保留みたいな? 升田の親父さんのところに全員集合みたいになった。 俺・ユカリ・ねーちゃん・大成さん・親父さん・リンカ・大ちゃん「初めまして。コウジの姉のサヤカよ。こっちが旦那の大成で、この子がリンカ。この子、男の子よ?が大樹」「初めまして。加賀ユカリと申します。よろしくお願いします」「コウジ君からいろいろ相談は受けてるんだけど、体調は大丈夫?酢の匂いでも大丈夫か?」「私は平気な体質みたいですね。2世帯住宅について聞きたかった」「あ、あれねぇ。友達とかでも評判悪いのよ。お金かけて改装したのに、ご両親が介護施設に入っちゃって半分空き家。みたいな?半分を貸すわけにもいかないでしょ?それなら最初からそのお金、改装資金を介護施設の入居費用としてとっておけばよかったー!って愚痴られたの。ご両親を介護するにも素人じゃ至らない部分が多々あって、不快な思いをさせちゃうから、結局は介護施設って聞いたわ」「あぁ、それは明日のわが身ですね。この家は?」「一応俺の家。でも、大成がまだまだ半人前だから居候みたいな?しかしなぁ、サヤカさんは脚が美しく、リンカも可愛いし、大ちゃんは今後どうなるのかな?このままで不満はないね。俺が介護施設に行くようになったら、俺は潔くこの家を大成に譲るよ」「うーん。一般的には両親との同居をしない方が上手くいくと思うけど?その、無理に2世帯住宅ってのはNGね。ここみたいに住み分けしてるなら、まあ妥協だけど。「コウジ。お金あるんでしょ?いっその事どっかのマンションの一室でも買えば?」「そう思ってたんだけど、2世帯案が出て口出し御免の空気になった」「「苦労人だねぇ」」 升田家の人々に同情してもらった。 その後なんとかユカリのご両親を説得し、俺達は4LDKのマンショ
「「わかる~」」「でも姉に「気持ち悪い、ウザい」とか言われていましたけど。今も言われ続けてるのかな?」「辛辣なお姉さんだな…」「これも内密に、父はタロウで『T』。姉はサヤカで『S』。で、俺がコウジで『K』です。あ、あと姉は書家でもあって、升田右左衛門さんに弟子入りして書家になりました。書家としての名前は「麗矢」姉の脚をイメージした名前だそうです」「おお、あの升田右左衛門さんのお弟子さんなのか?君のお姉さんは?」「はい。そうですが?」「人間国宝でそうそうお弟子さんを取らないと有名なのに、君のお姉さんはどうして?」「脚が決め手のようです」「「脚?」」「脚です。升田一族は俺の見たところ脚フェチのようで、脚が重要です」「なるほどな。書が得意でも脚はなぁ」「姉の同級生が右左衛門さんのお孫さんだったらしく、紹介してもらったそうです。その縁で、姉はその同級生と結婚をしました。今のところ1男1女ですね」「他に何か俺に聞きたいことはあります?」「いや、大丈夫だ。ところで、ユカリと今後はどこで暮らす予定だ?」「えーっと、俺が『K』の撮影をするのに使っていた家があるのですが、そこで暮らそうかと」「ダメよぉ、せっかくだからこの家を建て増しして2世帯住宅にしましょうよ。ねっ?」「俺の一存では……」 そのとき、ユカリが現れた。「別にいいわよ?ただし、干渉過剰はやめてよ?」「「わかったよ…」」 干渉する気満々だったのか?「しばらくはホテル暮らしで、完成次第ここで暮らしましょう?コウジ君も一緒に」 俺はその日久しぶりに升田の親父さんのところに行った。 マイケルもアスランも帰国した。「彼女を妊娠させて、殴られるつもりでご両親のところに行ったんだけど、思いのほか歓迎された」「時代だねぇ。婚前交渉をなんとも思わない風潮になってるから特に何も思わないんだろうよ」「あら、私と大成はちゃんと順序を踏んでたように記憶してるんだけど?」「父さんと母さんはデキ婚って聞いた」「え?マジ?私は結婚前の子なの?母さん貞淑だったんでしょうね?」「タヤカさんはタロウ一筋だったんじゃないか?「お、リンカ大きくなったな。一人で椅子に座れるのか?」「まだフラフラしてるから目が離せなくて困るよ」 大変だな、主夫?兼業で。「りんかはとうさんとじいちゃんがおすしをつくっ